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歌を歌ってきた人だからこそ、常識を覆す解釈、表現・訴えの強さが魅力

ーーF.J.ハイドンのチェロ協奏曲第1番ハ長調を演奏した有村航平さんーー

有村航平

(演奏する有村航平さん=2022年9月11日、鹿児島・宝山ホール ©J.F)

10歳から始めたチェロを中心に、ジャンルにとらわれず、特に生の演奏にこだわりながら鹿児島で音楽活動を続けてきた有村航平さんは、コロナ禍のこの2年数ヶ月、活動がストップしてしまい、「どれだけ耐えてやっていけるか」と何度も自問する日々だった。それだけに2022年9月11日に鹿児島・宝山ホールでハイルマン・オーケストラと共演したF.J.ハイドン作曲チェロ協奏曲第1番ハ長調は、「すごく楽しかった」という。

 

「今回に限らず、ハイルマン指揮のオケメンバーとしてずっとハイルマンさんと一緒に演奏してきました。彼は気持ちを表現すること、気持ちを訴えることをとても大事にされている。クラシックの常識で大体こうなるよね、ということを良い意味で覆す解釈とか、表現の、訴えの強さ、気持ちをたくさん込めるところがハイルマンさんの良さではないかと思う。特に、歌を歌ってきた方だからこそ、もっとできるんだ、ということを伝えてくださっているように感じる」

 

「たとえば、テンポ感を揺らして、色々な幅を持たせるとか、強弱に関しても、とてもチャレンジングなことをしている。それが行きあたりばったりではなく、彼の中にあるイメージから生まれてきている。それがちゃんと伝わったときに、面白いなと感じられるのではないか」

 

オーケストラをバックにソロで弾いたのは今回が初めて。「演奏中、自分のことに気をとられ、今の部分はどうだったのか、オケとどういう風に合わせていこうか、ということばかりにとらわれてしまうと、音楽がなくなってしまう。その瞬間に独りよがりなことをしているのではないか、と感じることが練習の時も含めて多々ありました」と振り返る。そんな「ごく当たり前のことを、当たり前にこなしている音楽家たちのすごさを垣間見た気がする」とも。「もっと勉強して、チャンスがあればまたやりたい」という。

©J.F

10年ほど前、クラシックを含め洋楽や邦楽など様々なジャンルの音楽を演奏者と聴衆が身近に接しながら聴くことができるホールを鹿児島市内にオープンした。「いわば『密』を売りにやってきました。大変だったこの3年間を過ごして、やっぱりいい音楽は自分に近いところで肌に感じながら聴くというのが一番大切だと痛感しました。鹿児島に本物のいい音楽を届けられる場所を作ったり、人と人とをつなぐ活動をしたりしていきたい」と有村さん。

 

「どんな演奏でも音楽でもそうですが、新鮮さがないと面白くない。毎回の演奏に新鮮なものがあふれている音楽はいいですね。そういう意味でハイルマンさんから教えていただけるものはたくさんあるので貴重です」

有村航平

©J.F

【コンサートのビデオはVIDEOのページにあります】

有村航平さんのプロフィール:

鹿児島市出身。室内楽、オーケストラをはじめ様々な演奏会に出演。また、クラシックのフィールド以外にもジャズ、シャンソン、ポップス、和楽器、朗読、舞踊との共演など、幅広い音楽シーンにおいて活動を行っている。2005年creative sound design Sitiera設立。2012年Sitieraホール(鹿児島市)をオープン、コンサート・イベント・展示会など多角的に企画・運営を行っている。平成20年度かぎん文化財団賞、第37回鹿児島市春の新人賞受賞。鹿児島国際天学非常勤講師。